大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚

NAYヨガスクール体験記 132
                     小林和之
点(ドット) 青い罫

 森

 新緑の季節を 森の中で過ごす。

標高700mの森の中なので、春は、珍しい草花たちに彩られる。

大きな樹木の芽吹きは、
手のひらを合わせる緑の世界の子どもの手のように見える。

轍を避けて 遠くまで続く淡い若草の道が広がる。


これから夏へ向かい、
青々としげるだろう植物たちの若葉も 
まだ生まれて間もない姿をして、

木漏れ陽に光る濡れた土の至るところで、
踏まれないように ひっそりと幼い奇妙な模様を描いている。


山椒の幼技に連なる小さな緑の葉を摘み取ってかじる。

ヒリヒリするような爽やかな香りが口中に広がる。
息子にかじらせると顔をしかめていた。


 黄色い花や白い花の群生、
よく見なければ形もわからぬ小さな可憐な花々は、
下界では見られないものだろう。

薄桃色の淡い連なり、高山植物の花が咲いている。

淡い桃色の花は、アプリで覗くと
エビネソウという和蘭の仲間らしい。可愛らしい。

よく見たら、そうだ、確かに蘭のような形をしている。
明るい森の中に凛として佇み、五月の風に揺れている。



 筍の生育範囲が 昨年よりも広がっているのだろうか。
ここにも そこにも生えており、
よく見ると動物に食べられているらしく、
あたりには 足跡も見られる。

ささやかな森の贅沢と言わんばかりに、
きっと グルメの猪が 先っぽの美味しいところだけを食べながら
辺りを歩き廻っているのだろう。


 いったい何種類の小鳥たちがいるのだろうか? 

空が白む頃から 囀りが聞こえ始め、
森に朝の陽が差し込む頃には、
数えきれない種類の鳴き声のシンフォニーが続く。


「緑が輝いているね」


 子どもがそのまま言うものだから、
そうだ、ほんとうに輝いているのだ、と思う。

新しい命のプラーナ。命の再生の色。喜びが開く色。

はじまりの色。
鳥はそのパワーを感じて、囀り、
羽ばたかずにはいられない。

もうどうにも止まらない! と、いっそう高く鳴く。


 昨年は気がつかなかったけれど、
美しい鳥の囀りたちの合間に
聴きなれない音が混じり込んでいる。

ポポ、、ポポ、ポポポ、、、鳥? 
でも どこで鳴いているのかわからない。

調べると 意外と大きな ツツドリという鳥らしい。

なんて可愛らしいのだろう。

一体何のために、どこで 、どんな顔をして
こんな鳴き方をしているのだろう、、、。

きっとどこかの木の上に隠れ、
「意味なんてないよ~」
と、とぼけた顔をしているに違いない。


 昼日中には ケンケンと雉の声も遠くから聞こえる。

僕には、どうもケンケンには聞こえないのだが、
他に当てはまる音が、そうか、確かに 見当たらない。

ドコドコという低いドラミング(羽を胸に叩きつける)の音が聴こえるのなら
目の周りを赤く縁取った美しい雉の雄はすぐ近 くに潜んでいるはずだ。


 森には落とし物も多い。
鹿の角を拾うのはこれで二度目だ。

子どもたちからは、一様に驚きの声が上がる。


「こんなに大きなツノを落として痛くないのかなぁ?」


 びっしりと生えている苔の塊の合間から
小さな木の芽が生え、
あちらにもこちらにも 思い思いに森の描くブリコラージュが広がっている。


新緑の森の中は魔法だ。

なんでも可愛く思う 女子高生みたいな気持ちになる。
ポタリと枝から落ちたのは、木登り上手のモリアオガエル、、、

と思いきや、あまり見かけない種類のアマガエルのようだ。

草木に溶け込むべく ミリタリーな迷彩模様を絵筆に乗せたのだろう。

森の色をした こんなに綺麗なカエルがいるのだから 驚きだ。

けれど かわいそうに。
子どもたちに捕らえられた このカエルくんは、
翌日バケツの中で不審な死を遂げた。

命の喜びに溶け込んで生きるものに プラスチックの青いバケツは、
きっと牢獄だったのだろう。
そうだね。もう捕るのはよそうよね。



 日が長くなったから、
夕暮れに富士の裾野の散歩に出かけた。

いたるところに 黒々とした溶岩石の転がる川べりを抜ける途中、
たぬきが慌てて横切った。

そして途中で立ち止まり、振り返るという大サービス。

「たぬきだ!」

と子どもたちの大きな声。
そうだ、確かにたぬきに見える。

でもあれは違う。アナグマだ。

今はとっとと走るが、冬になる前の彼らは、
歩くことすらままならないほど太ってくる。

以前、山道で
ヨタヨタと歩く 彼の隣を並んで歩いたことがあったが、
到底 野生動物とは思えない。

それでも人間に驚いて必死に逃げているのだ。

「お前さん、本当に野生動物なのかい?」

と言いたくなるほどユーモラスで、
冬に向かい、たっぷり脂肪を蓄えすぎて、うまく歩けないのだ。

いわゆる昔から「たぬき汁」と言われているのは
脂肪の層が 10cmにもなる このアナグマのことで、
タヌキは 臭くて食べられない。

ちなみに種別は犬科のタヌキとは、似ても似つかぬイタチの仲間に入る。


 早春の頃には、
雪面に 小動物や鹿や猪の足跡がたくさん見られた。

子どもたちがわからなかった不思議な足跡は、野うさぎのつけたものだ。


「足の形が 前と後ろで違うんだね~」


 もみの木の下には、ところどころに 実のクズが溜まっている。
頭上にリスがいた証拠だ。
まだ姿は見かけない。


 草原の広がる農道を歩き、
紫なのか、いや桃色にもオレンジがかっても見える
薄い墨で描かれたような富士山が 黒い森を従えて現れる。

そろそろ夕闇に消える世界に 最後の光を放っているのだろう。

もしかしたら昔の浮世絵師は、
見たまま、見えたままを描いたのかもしれない。


 ヤマガカシが道端を横切る。

「わっ~蛇だ~」

と、追いかけていたら、
小さな黒い人形が猛スピードで草原を見え隠れしながら
彼方まで走り抜けるという
ストレンジな光景に遭遇する。

呆気にとられる 疾走者の正体は、
直立する黒い人形ではなく、雉だ。

きっと人間に驚いたのだろう。

凄まじい速さで走り、
もう遥か彼方で黒い点のようになっている。


「はやっ」
「はじめて見た~」


 日本の国鳥であり、昔から食べられてもきた鳥、
実は、僕も食べたことがある。

新鮮な ささみ肉を 生のまま わさび醤油で頂くと
とろけるような至高の一品となる。



 気温が急激に下がるのだろうか、
夕暮れに染まった山並みにかかる 長い羽衣のような雲が
稜線に沿って弧を描きながら下降を続けている。

標高の低い土地では見られない現象だ。
見上げれば遠く藍色の空に星が瞬く。
今夜は三日月らしい。


 美しいものばかりに目を奪われ、
子どもを連れているにもかかわらず
遠くへ来過ぎてしまった。

おかげで夜の迫る森を歩くことになった。

美しい色彩の極みを放った世界は、
やがて漆黒の闇に豹変する。

そうして夕闇の迫る森を、
手を強く握る子ととともに歩く。

周辺の地図は頭に描かれているが、
夜の迫る森には、
本来 入るべきではない。

山登りをする時、
西に少しでも日が傾くのを感じると、
深追いはせず、
いつも 迷わず帰路を選んだ。

日没へ向け、
光が濃く変わるにつれて
本能的に 死の戦慄が走るから。

道迷いの恐怖も 体験済みだ。

森の樹形はよく似ているため、
人は、思いがけない 思い違いをするものなのだ。


 薄闇をかろうじて保つ頃、ようやく家に着いた。

黒々とした葉影の向こうには
星が輝いている。

タモの木を くべ足した薪ストーブの炎が、
音を立てて 優しく燃え上がる。

娘は 少しこわかったらしく、
炎を見つめながら まだ黙っている。

部屋の中に、タモの木のいい香りが広がっていく。

 

 こう書くと 山好きの家族のようだが、
子どもたちは 一様に
「海の方が好き」
と言い、この日も海へ貝拾いをしたついでに立ち寄ったのだった。

けれども 好きな世界が広がっていくのは いい。

自然は、中でも最良の教材だ。


「BIG ME~こころの宇宙の座標軸~」内藤景代・著
「好き」なものを発見する方法
の項が載っており、
皐月病まじりの人には、おすすめだ。


・・・波、小川のせせらぎ、風のそよぎ、樹木のざわめきなど、
大自然のゆったりしたリズムに身をひたしてみる。

自他未分になって一体感にひたると、
生きとし生けるものへの愛しさがわく。・・・


 命は、変容し、いつも変化する姿を惜しみなく見せてくれる。

この宇宙の秘密を孕んで。

繰り返し現れては消えていく。

森は発見に満ちている。


  


☆~☆~☆-----------------------☆~☆~☆  
*~・~・~・~*~・~・~・~*


 NAYヨガスクール体験記 132 「森」

※追記: 内藤 景代 (ないとう あきよ)記

《呆気にとられる 疾走者の正体は、
直立する黒い人形ではなく、雉だ。》
はい。

☆キジ(雉)には、森でなんどか出会いました。

美しいオス♂が、数羽のファミリーを率いて、
胸を張り、堂々と別荘地を散歩していました。

直立して、走る。
疾駆(しっく)するキジ(雉)♂の話は、
はじめて聞きました。……飛べばいいのに((笑))

森のおもしろい話をたくさん、ありがとうございます。
リフレッシュなさったようですね。

また、その世界を追体験させてくれる写真を四枚、感謝します。

夜空(よぞら)の三日月(みかづき)は耀き、富士山も綺麗。
野草の和ラン(蘭)、エビネソウも素朴で美しい。
緑の縞(しま)のカエル(蛙)クン、大きいですね。

ご家族のみなさまにも、よろしくお伝え下さい。合掌

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