けん玉やベーゴマ、こまや竹馬など、
昔からある伝承遊びというものがあって、
仕事がら、よく子どもたちに教えている。
昭和の時代に少年だった年代の方には、
懐かしいのではないだろうか。
ジープの生地を貼った漬物だるを
トコと呼んで囲み、
ランニングシャツ一枚でベーゴマに興じる。
そんな少年たちの路地で遊ぶ姿は、
今はもう昭和レトロの世界、、、かと思いきや、
実は、現代の子どもたちにも引き継がれ、
学童保育や
鋳造の街である川口市などでは、
大人も子どもも夢中になって遊んでいる。
鉄製のコマなのでぶつかれば弾け飛び、
火花も散る魅力のある遊びなのだ。
伝承遊びは
その名の通り、手短なテレビゲームとは違い、
伝承が必要で、
人から人へ教えていかなければ伝わらず、
世代が隔たれば、
やり方さえわからなくなる。
1年生くらいの
学齢の低い子にとって、
はじめての「出来た」までには、
かなりの忍耐力が必要で、
長い工程を
一つ一つクリアしていかなければならない。
指先でたどたどしく紐を巻き、
ほどけては、巻き直し、
またほどけては、巻き直す
コマやベーゴマなどは、
子供にとっては、長い道のりが必要となる。
何でもそうだといえば
その通りなのだが、
特に子ども時代には、
こうした体験を大切にしたい。
上手になるための
長い道のり。
「やってみたい」
「できるようになりたい」
と思う心。
集中力はもちろん、
継続してチャレンジする忍耐力もないと
続けられない。
特にベーゴマなどは、
巻き方も回し方も難しく、
自分の力で回せるようになるまでには、
平均して3日~1週間はかかってしまう。
普通に考えると、挫折する子が続出しそうだが、
そんなことはない。まだまだ捨てたものではない。
子どもたちは、ベーゴマを手からこぼし、
しゃがんで拾い、
また落としては拾い上げ、
忍耐強く 取り組もうとする。
しかし実は、
教え方にコツがあって、
導入のそれさえできれば、
苦労もなく子どもたちに
継続して取り組ませることができる。
できたら~をあげるよ、など、
もので釣っている?
手取り足取り大人の方が
忍耐強く教えている?
できないと罰を与えている?
褒めて褒めて調子に乗せている?
競争心を持たせてやるように仕向けている?
いいえ、どれも違います。
答えは、
さも自分で回せたかのように
錯覚させること。なのです!
子どもの背の方から、
手を回し、
さも自分の手のように
子どもの目線の高さで
ゆっくり紐を巻き、
手に持たせ、
上から手を添えて、
せーので、
ちっちのち!
その声とともに
手を離させると、
そう、トコの上で
勢いよくベーゴマが回る。
ほぼすべての子が、
初めて回ったベーゴマを
しゃがんで、じーっと見つめる。
さすがに
自分で回せたとは思っていないが、
さも回せているような錯覚の中にいる。
「僕も回せるようになれる」
と思えるのだ。
しかし
当然のことながら
一人ではうまくできない。
また同じように手を添える。
これを繰り返すと
子どもたちは、
自ら巻き始め、
失敗しても失敗しても
繰り返し挑戦し、
回せるようになることが
まるで当たり前の普通のことのように
挑戦を継続していく。
手に入れられるだろう
成功の喜び、
自分への期待を感じながら。
そういえば、
よく景代先生も
人をその気にさせている。
いつのまにか
自分ができるような気にさせる。
きっと
人の成長を
俯瞰してみることができるからなのだろう。
その人の未来の姿が見えて
語りかけているのかもしれない。
人が成長し、
理想を持つ時、
ほんとうは、まだ豆腐のようにやわなのに
一丁前のように振るまう時がある。
成長する前に、
人は背伸びをして振る舞うが、
それも大切な過程なのだ。
と正確ではないかもしれないが、
そのようなことをよく話されていた。
その過程を大切にするから、
壊れても、
崩れても
ホンモノへの再構築を始めることができるのだと。
|