大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚
NAYヨガスクール体験記 33
       小林和之
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海から生まれた青い人

  

10年ほど前に、
『海から生まれた青い人
』という童話風の作品を、
この「猫の集会」に連載したことがある。

人魚の歌を愛する青い魚が、
人間の少女に浜辺でたすけられ、
陸に憧れ、人となって歩いていくという、
今思うと、とんでもなくムリのある話なのだが、

僕は、結構気に入っていて、
何度か推敲し、
出来上がった作品を児童書出版社に送付したことがあった。

3社ほど送り、2社からは、送付後、すぐ、返信があり、
短いお礼の文とともに、いくつかの批評が書き添えられ、
つまり「出版は難しい」旨の一文が書かれていた。

一社からは返信がなかった。

 

教室の生徒さんにも数名読んで頂いた。

様々な批評や評価を頂いたが、
共通していたのが、
「この作品は、教室で成長してきたご自身のことですね」または、
「教室と和之さんとのことを書かれたものだと思いました」
というものだった。

 

 自分でもそうだと思った。

そもそもこの話しを書いたきっかけは、
教室で、景代先生とお話させて頂いたときに生まれたのだ。

それは、いつものように木曜・夜クラスの景代先生のお話しを聞いていたときだった。

僕は、その日、いつになく、景代先生の近くに座り、
お話を聞いていた。生徒さんたちも普段より少なかった。

何のきっかけで、この会話になったのかは思い出せない。
ただほとんど突拍子もなく言ったと思う。


「僕は、昔、ほんとうは人間ではなかった」と。


そして
「海辺の砂地でノタノタしている・・・
    アザラシ、か、オットセイみたいな、
          海洋の動物でした・・・!」
  と続けた。


景代先生も驚かれたご様子だったが、
生徒さんたちも振り向いて、びっくりした顔で僕を見ていた。

変なことを言っている自覚はあったが、
僕は、やめなかった。

こころからそう思えたし、
実際にそうであろうと思えたから。

つまりほんとうのこととしての実感があったのだ。

「・・・そのうち、耳が聞こえるようになりました・・・。
 手も生えて、モノに触れられるように・・・なった!」


笑っている生徒さんをよそに、
 
 僕は、きっとどんぐり眼で真剣に話し、
 
 景代先生もまた、真剣に聞いて下さっていた。
     (たぶんだが・・・)


「喉をふるわせると声が出た・・・
 音が生まれた・・・!」


 僕はまだ言った。

 しかし、そこまで言うと僕は止まった。
 何も言うことがなくなった。


 すると景代先生が言った。


「まだ足は生えてないのね」


 

 なんだか景代先生に、
 バカの仲間入りをさせているみたいで申し訳ないが、
 僕はそのとき、そう言われ、

 「そのとおりだ」と思った。

僕は、まだ、足が生えていない。

 立ち上がり、
 歩き出すことを、
 思いもしなかったのだ。

 


 僕が黙っていると、

 生徒さんのお一人が

 景代先生に向かい、口を開いた。



「人って、ただ、生まれただけでは、

  人になれないのですね」



「そうよ」と景代先生はお答えになった。



 

 返信のなかったもう1社から、
 なんと半年後に返信が届いた。

 美しい話なので、絵本に仕立てられないか、
 と編集部で検討してくれていたのだそうだ。

 結果は、内容的に児童書向けではないので、
 お流れになったそうだが、
 思いがけぬ返信に、
 僕は喜んだ。


 結実には至らなかったが、

 あの日の会話を、
 美しい
 と評して頂けたことに。

 

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  ※追記


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