「人生には節目のようなものがある」

よくある言い回しだが、僕もそれはあるように思う。

変化のときを迎えると、次の段階へ行くべく、それは、はじまる。

コンプレックスが集合体となって動き、
変化に見合った出来事が、
本人の気づきをうながすように、
良くも悪くも重なって起こるのだ。

向かい風のような試練と、
そんな局面を誰かが見守り、応援してくれている、
そんな気のする事象が、追い風のように吹いてくる。

変化のとき、こころの季節風。

僕が、この体験記の題材に
１０代の後半から２０代の前半をよく選ぶのは、
この頃、こうした季節風がよく吹いていたからだと思う。

何者かが、僕に作用を及ぼし、変化を起こそうとしている。

何をしでかすかわからない相手が、僕の主導権を脅かす。

そんな風にいつも思っていた。


このあたりのことは、
「ＢＩＧＭＥ〜こころの宇宙の座標軸〜」の
〔９．ＢＩＧＭＥを目指す。◎コンプレックスは雑居ビル〕　

の項にわかりやすく書かれてある。

僕は、それを読みながら、
「まさにこのとおりだ」と思った。

そして、季節風に煽られ続けている僕にとって、
かけがえのない福音であり、
「こうしたことがわかる人がいてよかった」
と、こころから思った。

「言葉を使い、試してごらん」

やがて、教室へ通うようになった僕は、
景代先生からずっとそう伝えられていた気がする。
この季節風の頃に。

言葉を使い、自ら乗り越えるのだと。

　こうした考え方は、運命論とは、逆のスタンスだろうと思う。

僕の場合、どう振り返っても自分の過去に
「運命」らしきものは見あたらない。

「それは避けられない運命であった。ジャーン」
と言う重々しいドラマのナレーションは、
どの事象においても、あてはまらず、
すべての出来事には、依って来る由縁と、
僕の意志により、作用された結果のみが
横たわっているように思う。

もたらされる事象は、もちろん予定通りには行かない。

けれど、変化の局面において、
僕は、間違いなく、
自分の自我による意志を用いて、
事象界へ何かを試みている。

つまり、
「それゆえに変化が起こった」という自覚があるため、
「決まった運命」と思える事象は、ひとつもない。

僕が、運命論的な占いや、予言、死後の世界や、霊感の類と
距離を置くのは、
「意志を持って試す」という
健康的な自我の姿勢が損なわれるようで、
嫌だからなのだと思う。

意識せずとも、上記のそれらは、
運命論的な諦念（あきらめ）が隠し持たれているように思うから。

こう言う僕だが、
かつて、嫌な出来事があったのを
「運命はある」とレポートを通して、
景代先生に言ったことがあった。

たぶん、そうでもしなければ受容することが困難だったのだろう。

景代先生の答えはもちろん否であった。

ふぅ、ため息でも聞こえそうな暗い顔をして、
僕が帰ろうとしたとき、
「運命なんてないわよ」と景代先生が、笑って話された。

そのとき、僕は目をそらして、
やはり、暗い顔で受け答え、こころを開かなかった。
きっと不幸で退屈だっただろう。

けれど、今の僕は、
だんだんと景代先生の言っていた意味を
理解できるようになっている。

だから思う。

運命という退屈な幻想を退け、
試してみる人だけが、
知る世界が、きっとあると。

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