大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚

NAYヨガスクール体験記 111
                     小林和之
直線上に配置

 
言葉 4


  たわいもなく思える言葉が、人を助けることがある。

それは、冬の日の夜だったと思う。

僕は、NAYヨガスクールの東新宿の教室で 一言もしゃべらず 沈黙してる。

ほんとうは、そろそろ絶望しているのにも 飽きていて、
ただふてくされ、黙っているだけで、
もはや 特段に 誰を憎んでいるわけでもなかった

東新宿の教室へ通いはじめて
5、6年は経っていたのだが、
僕は 誰とも 話そうとはしなかった。

景代先生のおっしゃる通り、
それが必要だったから、

そうしていたのだと思う。

ただ猫のように、
何も考えず、ここに こうしていられることが
心地よかったのだ。




【 ・・・オープンマインド。
《開いたこころ》で生きることが、
こころの成長にとって必要なことなのです。
けれど こころの成長を はばむものがいます。
それは こころ自身です。

外に向かって こころを開き、
他人に、こころを許したために、
傷ついてしまった こころは、
二度と、こころを開こうとせず、固く、凝縮して、
こころを閉じています。

中略 ・・・こころを開くというのは、
外へ向かってではなく、
上へ向かって開くことがポイントなのです。】

 
『冥想〜こころを旅する本〜』 内藤 景代・著 実業之日本社・刊より

 

 変なことを言うようだが、
何も考えずに 教室にいると、
失われてしまった ほんとうのこころに触れ、
その 声 を聞くことがよくあった。

僕には、それがとても価値のあることだった。

周りの人々には、
こころを閉ざしているように見えて、
その実、気兼ねなく 自分の内面へと 心を開いていられる。

そんな対話の出来る空間は、
教室をおいて他にはなかった。

景代先生から 「そのままでよい」と 
言われているようで 安心していた。

周りの人からは 
変わった人に思われていたのかもしれないけれど、
僕の内面では、
豊かな対話が あったのだ。

景代先生は、ちょっと不思議なところもある お方なので、
そうした 僕の内面に広がる 見えない対話に、
いつも さりげなく言葉を添えて頂いていた気がする。




 日常では、
つらく苦しい現実と向き合うこともあれば、
ようやく ささやかな楽しみを見つけたり、
仕事を始めたり、
その時々に 教室に助けられながら、
内面を見つめて歩いてきた。

そして内面にある出来事を
ひとつひとつ この世に現しながら、書き紡いでいく。

特に創造性が強いわけでもなく、
何かの生産性が高まるわけでもない。

書き紡ぎながら、
出口となる場所から、
光が差し込むこともあれば、
暗い無意識に沈み込み、
いつまでも ぶつぶつと 救われない呪文をつぶやき、
堂々巡りに陥ることもある。

出口の見えない こころの状況は、あまりよいものではない。

長らく そんな状態が続いた時期に、
景代先生が、ふと、こんなことを話された。




「冬の木は、あれは みんな死んだふりをしているのですよ」




 春に芽吹き、
葉脈の浮き上がる夏を盛りに、
秋になると 
めいめいに色づき、葉を散らせていく木々。

彼らは 冬になると 
冷たい空の下、
黒々とした樹肌を閉ざして、沈黙している。


その姿を「死んだふりをしている」
と 括る景代先生。
その言葉に、僕のこころは、
「面白いことを言うなぁ」
と反応していた。

 僕には、どう考えても
自然の摂理にしか思えない
冬の木々の変容を
「死んだふりをしている」
と括ることが ユニークで、
楽しく思ったのだった。

けれど それだけではなかった。
僕は、自分のことを言われている気がして、
死んだふりをしている冬の木々にシンクロし、
すでに気づいてしまっていた。




「そうだったんだ、
僕は、冬の木々と同じく、死んだふりをしていたのか・・・!」と。




 何か感動的なことを言われ、
がーんと心が動かされた感動秘話
・・・などと言った大袈裟なものとは、
ことを異にするものなのかもしれないが、
冬の木々を「死んだふりをしている」と括る。

そのユニークな括り方が、
僕には、ちょうど良いあんばいだったのだろう。

 

 この言葉を期(起)に、
長い沈黙は、終わり、
春の芽吹きのように 僕は 語り出すことにした。

そして 今も こうして 朴訥と語り続けている。




 景代先生の言葉で、
死んだふり をしていることに気づきはしたが、
詩人の紡ぐような 春の風は、まだ吹かぬようだった。

そのかわりに、
まぶたの裏に 微かな陽光の降りそそぐ
海のさざめきの 音が 聞こえていた。

もうすぐ新しい世界に生まれ、
海の世界から 離れるのだ、と。


☆~☆~☆-----------------------☆~☆~☆  
*〜・〜・〜・〜*〜・〜・〜・〜*


NAYヨガスクール体験記 111  「言葉 4」

※追記: 内藤 景代 (ないとう あきよ)記

《 「そうだったんだ、
僕は、冬の木々と同じく、死んだふりをしていたのか・・・!」と。》
はい。

そうだったのですか…。
「死んだふりの 冬の木」のお話と“言葉”が、
和之さんの こころに響き【共鳴・共振 シンクロ】して、
【意味のある偶然=共時性(シンクロニシティ)=シンクロ】
で、
外の世界へ、[点(ドット)] ひとつの一歩を踏み出す
きっかけになったのなら、うれしいです。

[点(ドット)] ひとつ〔変化〕については、
道ばたで3色の組みあわせで、今も【進化中】の花
オシロイバナ(白粉花)の〔変化〕を今月[8月の瞑想フォト・エッセイ]で書いています。

今月のお話が また、
【意味のある偶然=共時性(シンクロニシティ)=シンクロ】
になっていますね((笑))


植物たちの いのち(命)は、スゴイです。

ゴミと想われていた、2,000年前の「種(たね)」が、
縄文時代のゴミ捨て場の土の中から拾い出され、
たくさんのひと達の協力で、発芽し、開花した
縄文蓮(じょうもんはす)、別名を大賀蓮(おおがはす)。

2千年間、「死んだふりの ハス(蓮 はす)の種(たね)」は、
夏の今、日本のあちこちで大輪の美しい蓮の花を咲かせています。

わたしも、秋田県や千葉県、埼玉県、都下の町田市などで、
ふくよかな薄紅色のハス(蓮)の花を見ました。
朝早く起きて、出かけて((笑))

古代蓮(こだいはす)と、言葉ひとことで くくられますが、
花の いのち(命)は、スゴイ です。

死んだように、眠っていた古代蓮(こだいはす)。
現代に開花した姿(すがた)は、こちらへ ↓


http://www.bigme.jp/00-18-07/18-7/18-7.html


2020年8月1日(土)[内藤景代の瞑想フォト・エッセイ]記
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