大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚
NAYヨガスクール体験記 73
                     小林和之
直線上に配置


顔 1

 僕は、その頃、小さなビデオレンタル店のレジカウンターで、
顔におしろいを塗って立っていた。

僕の頭はいったい何を考えていたのだろう? 

まるで、この世ならぬ何ものかに人格を支配され、
その意識と肉体を乗っ取られているみたいだった。

いや、ほんとうはそうではない。

それは僕という人のこころに埋もれていたある音色なのだと思う。

 集団生活になじめず、孤立し、いじめられていた僕は、
ひとり廃屋に住もうと北海道へ向かった。

そして誰もいない海で、たったひとり波の音を聞いていた・・・。

 もしかしたらあの日、僕は、肉体を浜辺に残したまま、
さざ波の海へ向かい、歩いていったのかもしれない。

顔のことで嘲笑を浴び、からかわれ、いじめられて、
ついに北の果ての海にまで逃れて、
それでも逃げられないこころに耐えきれず、
無意識と呼ばれる海のさざめきのなかへと
消えていったのかもしれない。


 そして、ある朝、
まったく別の何ものかとなって、
波に運ばれ、
海辺に打ち寄せられたのだ。

世にも奇妙な こころの生き物となって。


 変容した僕は、不幸であっただろうか? 

いいや、僕は、幸せを感じていた。

たとえ病んだ色合いが混じり合っていたとしても。

幸せの音に違いはなかった。

19の夏、
海辺に打ち寄せられ、
生まれ変わった自分に、
僕のこころは満たされていた。


 みんな笑っていた。

あの崩れたふたり、
僕の店番のときに来ては、
舌打ちをして帰っていったふたりも、
僕の顔のおしろいに気の抜けた笑いをして、
それ以来、来なくなった。

「この頃の男の子はお化粧をするのかねぇ・・・」と、
彼岸にやって来て眉をひそめた叔母。

不思議そうな顔をする客。

怪訝な顔。顔、顔、顔、顔・・・。

 世の中にはいろいろな顔がある。

美しい顔もあれば、醜い顔もある、

人種や国の文化によって顔立ちも変わる。

なかには隔世遺伝か、
ある社会を構成する民族から見ると
異人種に思える顔立ちを持って生まれて来る人もいる。


僕の顔は、それだった。
肌の色が黒く、
顔立ちも日本人離れしていたのだ。


「だってあの人、ニヤって笑って気持ち悪いんだもん」

 僕は女の子と話したかったのだ。
ネクラな僕は、当時、若い女性とは、皆目口もきけず、
向き合うことも容易ではなかった。

そして息の苦しくなるような胸の動機を抑えつつ、
おつりを渡すそのときに、どうしてもニヤリと笑ってしまうのだ。

 僕は、その頃、蝉の幼虫が、地上に這い出る時、
その皮膚が真っ白であるということに興味を惹かれていた。

そして、僕は、思う。
光の届かない密室で、
白い肌の巨大な幼虫が、白いままでうごめいているのを。

「陽の光の届かない部屋でずっと暮らすことができれば、
もしかしたら肌が白くなるのかもしれない」

そう考えて、ふと正気に戻り、
その不自然な考え方に不安をおぼえたりした。

大丈夫、たいした不安感ではない。
そう思い自分のこころをなだめていた。


 僕が、白いお化粧をし始めたのは、
祖母が亡くなって一月も経たない頃だった。

街道沿いの大型ディスカウント店へ入った時、
偶然、僕は、陳列棚の脇にフックで掛けられている
日焼け止めクリームに目が止まったのだ。

僕は、それを心臓をどきどきと高鳴らせながら、
誰にも見つからないように、レジに並んで買ったのだ。

なぜなら、男が、「・・・うっすらと夏の薄化粧・・・」
などと書かれている商品を買うのは変だったし、
それに、その商品のパッケージには、
斜め後方からのアングルで映し出された
女の人の肩から上にかけてのどことなく色っぽい、
うっとりとした表情があったからだ。

 僕は家に帰ってから、
その、僕を変えるかもしれないクリームと
うっとりとしている女の人の写真を見ながら、
何とも言えない原初的な、
女の肉体からわきたつような魅力に恍惚としていた。

そして僕は、この写真の女の人のように、
性的になることの恥ずかしささえ、
魅力に変えている
優しげできれいな大人の人になりたい、と思った。


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※追記: 内藤 景代 (Naito Akiyo)記

[両親からいただいた、顔そしてからだ(体)など]は、
【自分で選べない】で、わたし達は生まれてきます。

にもかかわらず、
[顔や、からだ(体)などの外見]だけで
自分を判断されたり決めつけられたり、
まして、いじめらるのは、理不尽(りふじん)です。

☆落語(らくご)では、自分の奥さん(カミサン)の容貌を
「ニンサン バケシチ」とクマさんがいったりしますが。
すなわち、人間成分が3割(ニンサン)
妖怪=バケモノの成分が7割(バケシチ)。
失礼ですよね。笑いも引きつってしまいます。

先月そして今月の[内藤景代の瞑想フォト・エッセイ]で、
マロニエの[根っこ]に吐き気を感じ
『嘔吐』という哲学小説をかいたサルトルの話をしています。

実存主義の哲学をとなえたサルトルは、斜視でした。
顔の片目が斜視であってもいじめられることはなく、
豊かな知的才能を開花させ思想界のスターになりました。

それほどのひとでも、

「他人は、地獄だ」
   といっています。

サルトルに会って、“言葉”や態度であらわさなくても、
彼の容貌という外見について値踏みするような視線を、
痛烈に感じていたのではなかろうか・・・と想います。
「地獄だ」といいたいほどの痛みとして。
「男」だから、口にだしては決していわないけれど。

☆「顔の造作」は選べないにしても、
「顔の表情」は、自在に選べます。

こころ(心)の内部の感【情】を【表】にどうあらわすか。

だから、ひとりで演じる落語(らくご)が成りたちます。

クマさんにも、カミサンにも、瞬時に入れかわります。
それが、芸(げい)。

「ニンサン バケシチ」といわれたって、かわいいじゃない、
愛嬌(あいきょう)がある、と思わせてしまう芸の力量。

禿頭の古今亭志ん生(志ん朝のお父さん)は、
クマさんから、カミサンに変わると、色っぽかったです。

☆役者さんが、2時間くらいの舞台で、
無垢な天使から極悪人の悪魔に変身したり、
善や悪にそまる波瀾万丈の一生を表現できるのも、
「感情」をいかに表現するか、です。

同じひとなのに、ちがう顔になる。

【感情が「表情」という顔】をつくります。

喜怒哀楽の感情は、波動になり、相手に伝わります。

そういう感情や《氣》と、芸や演劇、シャーマン
コスプレと「ゆるキャラ」などのお話は以下をどうぞ。

『神通力の世界観を呼吸する 003-意気の呼吸法 』内藤 景代 Amazon Kindle版 ☆スマホ・PCでも読める電子書籍
『神通力の世界観を呼吸する 003-意気の呼吸法 』
内藤景代・著 Amazon Kindle版

スマホ・PCでも読める電子書籍


☆“言葉”の通じない動物や植物は、
[感情の波動]に敏感に反応します。

だから、まずは、自分の感情をふくめた
波動を綺麗にすることが、大切になるわけです。

それで、わたしは、
綺麗になるヨガ   心とからだを波動から美しく
をかきました。

男性にも必要な本です。
「男」にこだわっていると、
波動から綺麗になりません。

けれども、この本の題名という“言葉”に囚われ、
男性が手にとるには、ハードルが高いようです。

時代が変わったので、最近は、そうでもないようですが。

むかしの[硬派の和之さん]には苦手感があったでしょうが、
【優しげできれいな大人の人になりたい】
と願っていたのなら、いい線いきますよ。かないます。

『綺麗になるヨガ  心とからだを波動から美しく』 内藤景代・著 DVD版は『やせるヨガ』です
綺麗になるヨガ 心とからだを波動から美しく
内藤景代・著 実業之日本社・刊
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[瞑想フォト・エッセイ]   内藤 景代(NAYヨガスクール主宰)
[瞑想フォト・エッセイ]  内藤 景代(NAYヨガスクール主宰)

http://www.bigme.jp/kosin-list.htm

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