（　あなたは ひとりでは ない　）

　景代先生から、絵本をお借りしたことがあった。
(東新宿)教室には、NAY文庫という貸し出し図書のコーナーがあり、
そこに並んでいたものだ。

指導員の方が、「景代先生が、和之さんに、こちらをお読みになるように、と・・・」

　わけあって打ち拉がれていた僕は、
半ば、自動人形のようにその本を受け取っていた。

　そのとき受け取った絵本の題名は、
『絵で見る日本の歴史』
　福音館　西村繁夫著だった。

本の紹介にこう書かれてある。
〜石器時代から現在までの歴史が、
　　　長大な絵巻のように展開されています。
　　　　　　　　主人公はたくさんの無名の人たち〜

　僕は、その絵本を読んだ。

自分だけが特別な存在だと思っている
永遠の少年の僕にとって、
その絵本は不愉快なものだったろうか？　

正直に言えば、半ば不愉快ではあった。

いや、正確には、不愉快に思う余裕が
半分も残っていなかった。

けれど同時に、それとは別のものも受け取っていた。

この国の歴史の中に連綿とつながっている人々。
多くの無名の人々の営みを僕は見ていたのだ。

素朴な絵柄は、いっそう僕に何かをもたらしていた。

無名の人々の生活の絵。

僕もそのひとりであるという、
あたたかな安心感のようなものを。

　それ以来、
自分を特別な人間だと思っている僕が、
こころを入れ替えたわけではない。

目から鱗が落ちるように、
気づき、変わったわけではない。

しかし、
徐々に、
人々の中へ、
身近な、自分の関わる社会というものに、
逃げずにつながろう、と思うようになったのだった。

（あなたはひとりではない）

それは、
景代先生がこの絵本を通して、
僕に、伝えようとしたことを
受け止めたからであった。

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※※追記；

　内藤景代　記


先月、５月の｢瞑想フォト･エッセイ｣ でカミングアウトしていますが、
｢女の子は､本など読むな｡学問するな｡大学いくな｣
といった明治生まれの､昭和天皇と同い年の父の教えにすべてそむき、
敗戦後生まれのわたしは、本までかく、女の子になりました…。
http://www.bigme.jp/00-15-05/15-05/15-05.html


父が買ってくれる本は、
江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズや、
絵本や図鑑、少女ブックや少女クラブなどの絵や写真入り雑誌。
いわゆる「名作全集」など、〔文字だけの本〕はダメ…。
「赤くならないように」という、その教育方針は、今ならわかりますが…、
そのお話はまた次の機会に。

こころを育てる「本の大切さ」が身にしみているので、
わたしの著書の巻末には「読書案内」
をかねた「参考文献」をのせるようにしていました。

そして、東新宿のレッスン場所には、
内藤景代おすすめの「貸し出し図書」の本棚もつくっていました。

そのお話は、｢瞑想フォト･エッセイ｣こちらへ。
http://www.bigme.jp/00-0-01-essay-news/2002-07-14/2002-07-14.htm
【2002年7月14日(日)
☆「民主主義の原点」、パリ祭。
☆三色旗、自由、平等、博愛。
☆個人（ＭＥ）と社会（ＢＩＧ）の対立を、フランス革命をヨコ軸として考えた、わたしの卒論。
☆ルソ−で高名な平岡　昇先生と、
    サド裁判の澁澤龍彦さんのお二人が、
わたしの早稲田大学の卒業論文の先生の理由（わけ）】

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