大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚
NAYヨガスクール体験記 35
                     小林和之
直線上に配置

コンプレックス



北海道の旅のその出だしの頃は、
誰かにしくまれているようにさえ思うほど、
なぜか、人との関わりが多かった。

青森港の人形を連れた老人は別としても、
若いトラックの運転手さんに車内に泊めてもらい、
函館港を出発すると、
すぐに地元のバイク好きのおじさんに声をかけられ、
喫茶店で食事をご馳走になった。

北海道上陸一泊目となる函館港から、
さほど遠くない大沼公園で、テントを張っていると、
ここでもまた、近くの別荘に住んでいるという人に誘われ、
その後、ログハウスで、
数名の旅人とともに3,4日寝食をともにすることとなった。
あまり仲良くはなれなかったが……。

 

けれど、この別荘を後にした後、
人とのかかわりは、極端になくなり、
僕は日が沈み始めるたびに、
迫り来る闇夜と戦わねばならなかった。


「今日、僕はどこで眠るのだろう?」


それが毎晩続き、
日が暮れようとするたび、
僕は眠る場所のことを考え、途方にくれるのだった。

だいたいにおいて、キャンプ場か、
無人駅か、野宿をしてやり過ごしたのだが。

 


人と会うこともなく、
そうした日々が続くと、
僕のこころに、ふたつの異変が起こった。

ひとつめの異変は、
いつものように陽の暮れかかる頃、
一台のトラックが通り過ぎるのを見たときだった。

僕は、はっきりと、
トラックを「うらやましい」と思ったのだ。

そう思っている自分に気がついた。

少し考えて、そのわけは、わかった。

彼ら(トラックそのもの、もしくはトラックの運転手)には、
役割があるからだ。

この世のなかで「荷物を運ぶ」という役割を持ち、
そしてどこそこへ行く、
と言う明確な目的地がある。

僕は、彼らの持っている目的、
そして世の中とつながっている
意味のある役割をうらやんでいるのだった。


「僕には何もない」


それどころか、行くあてもない。

闇夜は迫っていた。

今日はどこで寝たらいいのだろう? 

そんなことを繰り返しながら
最北端へ向かい、
途中、砂浜へ降りたら、
バイクのタイヤが砂に埋もれて動けなくなり、
僕は曇り空の下に広がる海を3日も見続けることになった。

 


ふたつめ。
僕は、この北海道の旅で、
こころのしくみをまざまざと知ることとなった。

 


 すべてを捨てて、
廃屋でこころ静かに生きよう、
と思うもう一方で、
僕は、男らしくなって生まれ変わるつもりでもいた。

しかし、そう思えば思うほど、
過去に起こった恥ずかしい出来事が思い起こされ、
苦痛に顔をゆがめ、
思わずヘルメットの下で叫び声を上げてしまう。

僕はそんなことの繰り返しに
ホトホト疲れ、そしてようやく気がついた。

どこか遠くへ行っても、
人は何も変われない。

所変われど、人変わらず。

このことわざが
真実であることを
体感したのだった。


どこか遠くへ行っても、
僕は生まれ変わらない。

そして、思い込めば、
自分の理想通りの人間になれる
というものでもない。

それどころか、
今までの自分という
過去すら捨て去ることが出来ないのだ。

情けなかったこと。
恥ずかしかったあの日の出来事、
かっこ悪かった自分。

それは僕の意識へ執拗に送り届けられ、
逃亡を許さない。

僕は何も変わらず、
生まれ変わることもなく、
苦痛を伴う記憶は、
あざ笑うかのようにもこもこと想起され、
こころの奥底から、
間欠泉のようのボコボコと噴き出して止まらない。

集中したり、
何かに取り組んだりする対象がなく、
人との関わりが皆無に近くなったため、
それは、さらに抑えがたいものとなり、
頻繁に、束になって襲いかかってくるのだった。


*〜・〜・〜・〜*〜・〜・〜・〜*〜・〜・〜・〜*〜・〜・〜・〜

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ※追記

「行きつ戻りつ・・・こころの旅..............」

今回の和之さんのお話は、
以前の「北海道へ向かったバイクの旅」の続きです。

「らせん的な逆戻り・・・」で、くりかえし、湧いてくるイメージの群れ。

..............瞑想しているときの、イメージの群舞のようです。

↓↓↓↓

和之さんの「NAYヨガスクール体験記 30 
 「18才の旅 -2」に、つながっています。こちらへ


                       内藤景代・記

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※※※追記:


 『冥想   こころを旅する本』  内藤景代・著 こちらへ

BIG ME〜こころの宇宙の座標軸〜内藤景代・著 こちらへ

↑↑上記の古書などは、↓↓↓
※※内藤景代のAmazon 著者ページ」から、どうぞ。こちらへ




          ◎NAYヨガスクール(内藤景代 Naito Akiyo主宰)   since1976
                 ←前へ    次へ●→

                                                  

  NAYヨガスクール