大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚
NAYヨガスクール体験記 31
       小林和之
直線上に配置


被害者意識との対決

  

入会した頃、教室には、レポート提出制度というものがあった。

自分の気づきや考えをレポートにまとめて、提出すると、
景代先生から赤色のペンで線を引いて頂けたり、
必要に応じて、アドバイスを書き込んで頂けるのだ。

入会当初、僕は、レポートを書くことを指導員さんからすすめられていたと思う。確かな記憶はないのだけれど、そう言われていたと思う。なぜそう思うかというと、僕は、教室へ通いながら、いつも大きな憂鬱とともに「書けない」と思っていたからだ。

「書けない」

僕はそう思い、悲しくてしかたなかった。
誰にも思いを伝えられないという現実。
そのようなものが、「書けない」と思うたびに迫って来る。

「書けない」そう思うたび、僕は凍結した。
耳の奥がシーンと鳴って、いっそう言葉をなくしてしまう。
そしてもう誰とも話せない、と思う。

 文章を書くのは苦手だったが、そのことではない。
伝えたいことがなかったわけでもない。

ほんとうのことを伝えられなければ、
僕は、この凍結するような孤独から、
逃れられないことを知っていたのだ。

 

しかし、この「書けない」という思いは、
やがて、そうした緊張感に耐えられなくなったのか、
「書くものか、言うものか」という感情に変わっていた。

僕は、こころを閉ざして、怒っていた。

しかし、この「書くものか、言うものか」という思いは、
甘えられる対象があって、はじめて成り立つ意識であり、
あきらかに、わがままを言う子どもと同じ種類の依存で、
自分と向き合い切れない弱さの現れでもあった。

このとき、僕は、教室とつながることで、
依存対象を見つけてしまったのだと思う。

 

《  被害者意識を持つと、人間は醜くなります。

なぜなら、被害者意識は、乞食根性だからです。

あの人がこうしたから、私はこうなった。
という責任の転嫁があって、自分の責任とか、誇りがないのです。
〜中略〜 
ものごとにはすべて、依ってきたる由縁があるのです。

原因がなければ、結果はありません。すべて自業自得です。
自分がやった分しか返ってこないのです。

不平不満は、すべて、他人へ頼る気持ちから生まれます。
こうして欲しい、と他人に求めるから、
それがかなえられないと、不満が起きるのです。

他人に対して、なにも求めなければ、
他人が、自分のためになにかしてくれたら、
ほんとうに、有り難いことだ、
という感謝の気持ちが、わいてきます。

ありがとう、というのは、そういう意味です。

 

中略

 

☆被害者意識を持って、いじけていると、
他人は、その人に意地悪をしたくなります。

たとえば、電車の中で、わざと荷物を重そうにズリ上げたり、
もの欲しげに、席をさがす人には、意地でも、席を譲りたくなくなる、天邪鬼な気持ちになりませんか? 

逆に、坂道で、一生懸命に一人で、重い車をひっぱっている人を見ると、つい後押しをして上げたくはなりませんか?

長い人生で、他人が意地悪をしたくなる人と、
手伝ってあげたくなる人とでは、ずいぶん差がつきます。

 

 『こんにちわ私のヨガ』内藤景代・著より 73 
      被害者意識は捨てましょう  から抜粋

 

被害者意識。

教室へ入会し、僕がまず向き合わなければならなかったのは、
これであった。

《何かがおかしい、これは、ほんとうは違う》と、
いつもこころに、わだかまってはいる。

そうしたある種の不快感を、いつも持ちながら、
けれど、そこから抜けられないでいる自分。

僕は、この醜い被疑者意識にからめとられ、そこから抜けられない。

しかし、これを持っている限り、人のこころは成長しない。

今ある自分のありようを人のせいにしていたら、
自分の姿(意識)に気づくことが出来ず、
方向転換や、変容といった、
意志が伴うことで始めて成り立つ、
こころの成長の機会を失うからだ。

それは成長への意志を失うことと同じであった。

僕は、それを半ば自覚し、半ば無自覚であったと思う。


僕は、火曜日の昼の初級・指導員クラスから、木曜日の夜の(内藤景代指導)・中級のクラスへ、勝手に移動した。今思えば、これは大変失礼なことであり、たぶん(当時の)ルール違反でもあった。
だが、僕は、それを挨拶なしで行った。

「このままではダメだ、このままでは、終わりにすることが出来ない(成長することが出来ない)」

 あせりにも似たそんな思いに僕は囚われた。

「そして成長したい」という思いと同じくらいの大きさで、
「終わりにしたい」
という思いに、僕は、突き動かされていた。

「僕はもう、僕を終わりにしたい」

そのはじめの一歩に、被害者意識との対決があった。

 

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 ※追記

    現在のNAYヨガスクールでは、システムが変わりました。
  新入会のかたは、はじめに、
  内藤景代のクラスで、レッスンなさることをおすすめしています。
           こちらへ

       ☆★和之さんが入会なさった頃、
  1980年代〜1990年代のNAYヨガスクールのクラスは、
  初級と中級(入会後3ヶ月以上)に分かれ、
  〈中級>を内藤 景代が指導していました。

  それで、初級のかたでも、「レポートを提出」することで、
  内藤景代と、「書面で対話」できるようになっていました。

  だから、指導員のかたは、和之さんに、レポート提出を、
  おすすめしたのでしょう。

※※追記:
***「猫の集会」和之さんへのお返事のようなコメントを、
   「瞑想フォト・エッセイ]で書きながら、ふと、思ったのは、
   和之さんの毎月連載「NAYヨガスクール体験記」は、
   10代のあの頃の「レポート提出」に似ています。
  
  今は、○長として、人を指導する立場の和之さんなので、
  むかしと、ちがい、本名で、「公開レポート」として、
  「彼と似た人」も読めるようになさっているのかもしれませんね。

      NAYヨガスクール 内藤景代(Naito Akiyo)・記
  
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 ※『こんにちわ 私のヨガ』 美しく変身する107の秘密
          内藤景代・著は、こちらへ        

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