大きな海の中で、枠に入ったままの青い魚
NAYヨガスクール体験記 17         小林和之
直線上に配置

鏡   : 2


鏡……。僕は鏡に呪われたのだろうか?

 

いったいどんな魔法がかかったというのだろう? 

 

僕は鏡を怖れ、鏡を求めている。

 

そこには「僕」というものが映るらしい。

 

それがよくわからなくて僕は鏡を見るのだろうか? 

 

自分の姿を鏡で確認せずにおれない。

 

しばらく自分の顔を見ないでいると不安になってくる。

 

容姿が醜くなるのを怖れ、気が休まらない。

もしくは醜いと思い込む。

 

……「醜形恐怖」という思春期特有の症状があるという。

 

今思えば、僕もそれに近いものだったのかもしれないが、

しかし容姿において、歴然とした違いが僕にはあった。

 

僕の肌は黒かった。

はじめてそれを知ったのは小学生の頃だったと思う。

 

当時の国語の教科書には、差別表現、

と物議をかもし出した「チビクロサンボ」がまだ載っており、

授業に使われていた。

 

木の上に登ったサンボを追いかけ、

ぐるぐる廻った3匹のトラが

おいしそうなバターになってしまうあの名作だ。

 

それは国語の授業中のことだった。

 

「チビクロサンボ」を読む生徒の声を聞きながら

担任の男の先生が「うぅ」と何かうめき、

額に皺を寄せ、眉を八の字にしながら教科書に顔をうずめている。

 

……笑っているのだ。

 

クラスの子どもたちが担任の異変を見つめていると、

教科書から顔を上げ担任が笑いながら言った。

 

「いや、失礼、これ読んでいたら

小林のことかと思っちゃったんだ。ふふっふ」

 

僕はワケがわからず、

頭上に?マークを浮かべただけだった。

 

クラスの子どもたちが その後はやし立てたりしていれば、

わかりやすかったのだが、

そんなこともなかった。

 

「どういう意味だろう?」

それすら考えなかった。

 

僕は自分の肌の色が黒く、

一見して黒人のように見えるという事実を

このときに知る(自覚する)ことはなかった。

 

それはさらに大きくなった小学6年生になっても同じだった。

 

僕は絵がうまく、あるとき担任の先生から、

卒業文集の製作のために

クラス全員の似顔絵を描いてくれと頼まれたのだ。

 

僕の描いた似顔絵は、自分で言うのもなんだが、

どれもそっくりで、皆が驚き、似すぎで嫌がる人がいるほどだった。

 

けれど皆が驚嘆するくらい そっくりに描くその似顔絵のなかに

たったひとり、まったく似ていない子がいた。

 

特徴的に描かれ、気に入らない風だったクラスメートのひとりが

僕に言った。

 

「ほら、小林くんだけずるいよ、

自分のだけぜんぜん似ていないじゃん」

 

 ほんとうにその通りだった。

 

僕の似顔絵だけはまったく似ていない。

 

「なぜだろう?」

 

僕は 実は このときはじめてそのことに気づき、

その事実に驚いたのだった。

 

自分だけ特別にハンサムに描いたわけではない。

言うならば「ニコちゃんマーク」のような、

誰が見ても当たり障りのない容貌で 

自分を描いたのだった。

 

その絵は クラスメートの子たちの顔を特徴的に描いた手法とは

明らかに違い、似顔一覧のページに異質な絵として浮かび上がっていた。

 

 僕はこのとき、何かこころの不思議のようなものを感じた。

 

それは「自分の姿は見えない

(もしくは見えづらい)」

 

ということだった。

 

そう、たとえ自分の姿を鏡に映していても、

見えない人には

見えていないのだ。

 

勿論これは一般論ではなく、

特別な事例なのだろうが、

僕はそういう性格であった。


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 ※追記: NAYヨガスクールの


★NAYヨガスクールの鏡の側

NAYヨガスクール
(内藤景代・主宰)のレッスンは、

ヨガのポーズをするときは、

鏡の前で練習し、
鏡の側が正面になります。

 

次に、瞑想するときは、

鏡のない、反対側の空間が正面になるので、
全員が、体の向きを変えます。



鏡のない空間が、「NAY正面」です。

瞑想用の「3Dヤントラ額」(内藤景代・作)や、

季節の飾りがアレンジされている、瞑想空間です。

 

床にはカーペットが敷きつめられています。(だからヨガマットは不要です)

 

「NAY正面」の毎月の飾りについてのお話は

 

瞑想用の「3Dヤントラ額」(内藤景代・作)の例は、
   

 


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